認知症の種類

一口に認知症といっても様々な種類があります。

ピック病アルツハイマー型でも脳血管性でもない認知症

 

行動異常がエスカレートするピック病

以下は実際のピック病患者:男性Aさんのケースをもとにした、患者の具体的な症状です。
このような症状に思い当たる節があれば、ピック病かもしれません。

【男性Aさんのケース】

Aさんは非常に勤勉で活動的な方でした。
そのため、会社でも仲間内でも大変信頼されていました。
休日でもじっとしていられないようなタイプで、庭いじりの大好きな方でした。

【男性Aさんにあらわれたピック病の症状】
無気力
庭いじりもせずに、ボーッと過ごすようになる。この時点で家族は「うつ病」を疑った。
無表情
表情が乏しくなる。
激怒
ささいなことで、急に激怒する。
家事不能
電子レンジとオープントースターを使い分けられなくなる。
帰宅不能
外出先からひとりで帰れなくなる。
非常識
他人の畑に無断で入るという行動をとるようになった。

ピック病ってどんな病気?

原因不明の病気

初老期痴呆(初老期とは歴年齢上の定義は45歳~65歳)の代表疾患がアルツハイマー病とピック病で、現状ではいずれも原因不明の大脳萎縮性疾患です。
アルツハイマー病がかなりその病因が解明されつつあるのに対し、ピック病は病因解明の糸口となるような特徴的病理像がありません。
そのことがピック病研究の立ち後れの原因となっていて、治療法はいまのところ発見されていません。そのため、介護が中心となっているのが現状です。

発症率はアルツハイマー病の1/3以下

ピック病はアルツハイマー病に比して少なく、発生はアルツハイマー病の1/3~1/10といわれているます。

平均発症年齢は49歳

40代~50代に発病のピークがあり、平均発症年齢は49歳で、アルツハイマー病の平均発症年齢に比べ若干若いのが特徴です。

性差がない

アルツハイマー病は女性にやや多いと言われていますが、ピック病に性差はありません。

初期症状では知的機能は保たれる

アルツハイマー病の場合だと、記銘力・記憶力低下などの知的機能低下が初発症状に表れますが、ピック病の初期は記憶・見当識・計算力は保たれています。

人格障害が激しい

認知症にも色々ありますが、人格障害が一番激しいのがピック病です。
アルツハイマー病の人格障害はピック病に比べれば軽く、脳血管性痴呆ではさらに軽いといわれます。

人格障害はたとえば、人を無視した態度、診察に対して非協力、不真面目な態度、ひねくれた態度、人を馬鹿にした態度などがあります。
しかし、本人に病識はありません。

症状として以下のような情緒障害があらわれます。

  • 自制力低下(粗暴、短絡、相手の話は聞かずに一方的にしゃべる)
  • 感情鈍麻
  • 異常行動(浪費、過食・異食、何でも口に入れる、収集、窃盗、徘徊、他人の家に勝手にあがる)
  • 人格変化(無欲・無関心)
  • 感情の荒廃
  • 特に対人的態度が特異
  • 滞続言語

ピック病特有の症状といえるのが滞続言語です。
滞続言語とは、特有な反復言語です。会話や質問の内容とは無関係に、何を聞いても同じ話を繰り返します。
しかしこれらは他動的に誘発され、持続的で制止不能です。

診断の基準は?

CTやMRIを使い、局所性の脳萎縮(側頭葉、前頭葉に多い)があるかを調べます。

鑑別診断としては、アルツハイマー病、統合失調症があります。
語間代(例:ナゴヤエキ、エキ、エキ)が認められことが多いという特徴で鑑別されます。
統合失調症とはCT(MRI)を撮ることにより鑑別可能です。

経過は短め

経過はアルツハイマー病よりも短く2~8年で、衰弱し死亡することが多いようです。

ピック病 チェックリスト

こちらで紹介しているチェックリストは、ピック病の専門家によって作られたものですが、厳密にチェックできるものではありません。
おおまかなピック病の度合いを知るための目安としてご利用ください。

ご本人だけで行うと、自分に厳しくチェックをしてしまったり、それとは逆に甘くチェックをしてしまったりする可能性があります。
そういった場合にはご家族に協力をしてもらうほうがいいでしょう。その方がより客観的に判定できます。

状況に合わない行動
場所や状況に不適切と思われる悪ふざけや配慮を欠いた行動をする。
周囲の人に対して無遠慮な行為や身勝手な行為をする。
意欲減退 
引きこもりや何もしないなどの状態が持続し、改善しない。
思い当たる原因は特になく、本人の葛藤(かっとう)もない。
無関心
身だしなみに無関心になり、不潔になる。周囲の出来事にも無関心になる。
逸脱行動
万引きなどの軽犯罪を犯すが、反省したり説明したりできず、同じ違法行為を繰り返す場合が多い。
時刻表的行動
散歩や食事、入浴などの日常生活の様々な行為を時刻表のように毎日決まった時間に行う。
この際、やめさせたり、待たせたりすると怒る。
食べ物へのこだわり
毎日同じもの(特に甘いもの)しか食べない。際限なく食べる場合がある。
言葉の繰り返し
同じ言葉を繰り返したり、他人の言葉をオオム返ししたりする。
好みの変化
突然甘いものが好きになるなど、食べ物の好みが大きく変わる。
アルコールやたばこなどは毎日大量に摂取するようになる。
発語、意味の障害
無口になったり、語彙(ごい)が少なくなったりする。
物の意味が分からなくなる。
短期記憶の維持
最近の出来事など、短期記憶は保たれる。また、日時も間違えない。外出しても道に迷わない。

40歳以上の方で、上のチェックリストで3項目以上当てはまると、ピック病の疑いがあるそうですが、ピック病かどうかの最終判定はこのテストだけではできません。
色々な診断などを行った上で専門家が総合的に診断します。
出来るだけ早めに医療機関を受診し、詳細な診断を受けることをお勧めします。
また、医療機関を受信する際にはできればピック病の専門医を訪ねることを、あわせてお勧めします。

ピック病チェックリスト:群馬県こころの健康センター・宮永和夫所長作成

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