認知症の種類

一口に認知症といっても様々な種類があります。

パーキンソン病・パーキンソン症候群ドーパミンに関する情報

 

ドーパミンニューロンってなに?

ドーパミンニューロンは大脳基底核とそれに指令を与える大脳皮質、特に前頭前野(ぜんとうぜんや)や帯状回(たいじょうかい)などに枝を伸ばしてドーパミンを分泌します。
そこでは技能を磨いたり、次第に行動を習慣化したり、そのような個々の行動をどのような順番に組み合わせて行動を起こすかを企画したり、戦略を練ったりする働きをしています。

ドーパミンの働き

私たちが日常何かをするときには、意識するしないに関わらず、必ず何らかの動機がその行動の背後にあります。
ものを食べたり、ゲームをしたり、勉強をしたり、スポーツをしたり、溝に落ちないように道路を歩いたり、あるいは朝起きて顔を洗うといったごく日常の習慣にも、当然何らかの動機があります。ドーパミンニューロンはそのような行動の動機付けに関連して活動を増すことがわかってきました。

私たちのまわりで起こるさまざまな出来事がいいことであれ、嫌で危険なことであれ、とにかく自分にとって意味があり、何らかの行動を引き起こすような場合には、必ずドーパミンニューロンが活動しています。
つまり、私たちは周囲の環境にに適応し学習しながら、生活するすべを会得していきます。
言ってみれば人生は学習の連続です。ドーパミンはそのような学習の強化因子として働いているのです。

ドーパミンの主な作用
心筋への作用
利尿作用を促す

ドーパミンが減るとどうなるか?

ドーパミンニューロンが減少してドーパミンが少なくなると、立ち上がって歩こうと思っても、身体がすくんでしまって、どういう順番に筋肉を動かしていいかわからなくなったり、身体が震えたり、運動そのものができなくなってしまいます。
その状態をパーキンソン病とか、パーキンソン症候群といいます。

また、物覚えが悪くなったり、忘れっぽくなったり、万事がゆっくりになって反応が鈍くなり、集中力や注意力も失われ、無力感、無気力になったりします。
また、次第に人と交わるのも嫌になり、社会から離れていきます。そのような状態になると、皮質下痴呆と呼ばれます。

何でドーパミンがなくなるとそのような症状が出るのでしょうか。
それは、神経回路の情報処理に異常が起こるからです。
パーキンソン病の場合、ほぼドーパミンニューロンだけが死んで他の神経細胞は正常のままです。
その結果、他の神経伝達物質との間にアンバランスが生じます。
最近の研究によると、ドーパミンが減ることでアセチルコリンを産生放出するコリナージックニューロンの活動そのものに異常が起こることが分かってきています。
要するに、ひとつ異常が起こると次々と連鎖的に他の神経細胞にも影響を及ぼしていくわけです。

ドーパミンが少なすぎると・・・(欠乏症)

パーキンソン病/精神病/物忘れ/無気力/集中力が低下する/注意力がなくなる/物覚えが悪くなる

ドーパミンが多すぎるとどうなるか?

ドーパミンが多くなりすぎるのも良くありません。
幻覚やパラノイア(※1)が起こったり、発話や運動をコントロールできなくなって、奇妙なことや恥ずかしいことを思わずやってしまったり口走ったりします。
また、不必要とわかっていながら同じ行動を反復する強迫神経症になったりします。

薬物依存もドーパミンに関係しています。
麻薬やコカイン、アンフェタミンなどの覚醒剤やタバコなどはドーパミンを増やす効果があるため、その行動そのものが動機となって強化されます。
その結果、精神依存を作り出し、やめたくてもやめられなくなります。
脳から見ると、タバコも覚醒剤も殆ど同じ作用があると言っていいことが明らかになっています。

※1:パラノイア=偏執病・妄想症。統合失調症(精神分裂病)の陽性症状。

ドーパミンが多すぎると・・・(過剰症)

幻覚・妄想/パラノイア/統合失調症/強迫神経症/異行/おちつきがなくなる/力加減がわからなくなる

麻薬とドーパミン…MPTP物語

麻薬そのものがドーパミンと深く関わっているのは事実で、麻薬とドーパミンは切っても切れない仲にあります。
パーキンソン病研究を飛躍的に発展させたのも、ある意味で麻薬中毒患者たちの功績だといえるかもしれません。

麻薬の常習者たちは自分で麻薬(メペリジン類似物質)を合成して、自分に注射を打ったり、商売をしたりするのですが、麻薬合成の際に、中にMPTPという不純物が混じってしまいました。
これは注射すると血液脳関門を通過してグリア細胞の中でモノアミン酸化酵素(MAO-B)によってMPP+に変換されます。
さらにドーパミントランスポーターによってドーパミンニューロンに取りこまれるため、ドーパミンニューロンを殺してしまいます。
MPP+は細胞内のミトコンドリアに集まりNADPHデヒドロゲナーゼ(複合体I)という酵素を阻害し、細胞のエネルギーであるATPの生成を阻害するのです。
1983年、ラングストンは次々と若い麻薬中毒患者がパーキンソン病そっくりになって病院に担ぎ込まれるのを見て、MPTPが原因物質であることをつきとめました。

このMPTPはヒトやサルなどの霊長類できわめて感受性が高く、高齢になるほど高度で不可逆的な障害を引き起こします。
人工産物であるMPTPがほぼ完璧なパーキンソン病を作り出すことがわかったため、パーキンソン病の原因となる物質が私たちの環境にあって、知らず知らずのうちに摂取していることがパーキンソン病の原因なのではないかと考えられるようになりました。

これまで、食物の中に含まれるTIQ類やカルボリン類などの物質が注目されましたが、残念ながら原因物質としては今のところは否定的です。
また原因物質が何であれ、MPTPの代謝から類推してMAO-B阻害剤や酸化防止剤などがパーキンソン病の進行を遅らせるのではないかと期待されましたが、これもはっきりとした結果は得られませんでした。

最近、殺虫剤に含まれるロテノンという物質をラットに注射しつづけたらパーキンソン病そっくりの病態を作り出すことに成功したという報告が出て、今脚光を浴びているところです。
いずれにしても、何らかの遺伝素因のある人が環境の何らかの物質に長い間暴露される結果パーキンソン病が発症するというのが現在の定説になっています。

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