認知症の予防

予防に努めれば、認知症のリスクを軽減できます。

食生活と認知症の関係地中海風の食事と魚が有効!?

 

魚を常食にすると脳血栓、心筋こうそくが少ない

魚を主食とする日本の漁村や、アザラシや魚などを常食しているイヌイットの人々に、脳血栓や心筋こうそくが少ないのはn-3系脂肪酸であるEPAやDHAのおかげであることが明らかとなりました。

n-3系脂肪酸ってなに?

n-3系脂肪酸の種類

n-3系脂肪酸は多価不飽和脂肪酸の一種です。
α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン(DPA)酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)などがあります。

青身の魚に多いEPA、DHA

EPA、DHAは白身、赤身の魚よりも青い魚の油に多く含まれています。
EPAは、養殖ハマチ、イワシ、マグロ(トロ)、サバの順に多く含まれています。
DHAはマグロ(トロ)、養殖マダイ、ブリ、サバ、養殖ハマチの順に多く含まれています。
EPA、DHAには、HDLの増加(EPA)、コレステロールの低下(DHA)などの作用のあることが分かり、注目されています。
魚の脂肪は酸化されやすいので鮮度の高いものを選ぶこと、またEPA、DHAを多く含む魚の油を取れるように、鍋やムニエルなどの調理方法が適しています。

地中海風の食事はアルツハイマーの危険性を下げる!

地中海風の食事

▲地中海風の食事

アメリカ・ニューヨークにあるコロンビア大学の「アルツハイマー病と加齢脳のタウブ研究(Taub Institute for Research in Alzheimer's Disease and the Aging Brain)」のNikolaos Scarmeas医師らは、食事とアルツハイマー病の関係について疫学的な調査を行い、地中海風の食事をとる人はアルツハイマー病になりにくいことを認めました。

調査は、ニューヨーク在住の認知症のない2258人に対し実施され、食事内容を聞き取り、その後4年間の追跡が行われました。
その間、調査対象者のうち262の人がアルツハイマー病になりました。
年齢、性、民族、教育、アポE蛋白、総摂取カロリー、喫煙、疾患および肥満度について同じ条件でみたところ、地中海風の食事を多く摂る人は少ない人より40%アルツハイマー病のなる危険性が少ないことを認めました。

なお地中海風食事とは、オレンジやりんごなどのジュース、トマトやブロッコリーなどの野菜、エンドウ豆などの豆類、パンやコメなどの穀類、オリーブオイル、魚が多く肉が少ない、適量のワインのある食事のことです。

この調査報告は 神経学雑誌「Annals of Neurology」2006年4月18日電子版に掲載されています。

やっぱり青魚がいいらしい?!

長寿で有名になったギンさん。実は脳にはアミロイド斑(老人斑)が出来ていたのだそうです。
アミロイド斑(老人斑)はアルツハイマー病患者に多くみられるもの。
それにも関わらず、彼女はアルツハイマー病を発症しませんでした。
これはなぜでしょうか?

ギンさんは生前、魚を好んで食べていたそうです。
その結果、ギンさんはアルツハイマー病になることなく元気に生活ができました。
彼女の脳を救ったのは、魚に含まれるDHAだったのです。

脳内にアミロイド班(老人斑)が出来るとそれを処理しようと免疫細胞が働き始めます。
すると、免疫細胞はアミロイド班(老人斑)だけでなく、正常な神経細胞も攻撃してしまいます。
そして、脳の神経細胞が炎症を起こします。
ところが、DHAはそれを修復する力を持っているということが分かったのです。

調査の結果、魚を1日80g食べていた人は発症し、1日120g食べていた人は発症しておらず、発症しても1/5程度だということも分かりました。

1日の必要量はたったこれだけ。

  • マグロのトロなら…2切れ
  • タイの刺身なら…5切れ
  • イワシなら…2匹
  • サンマなら…1匹

脳血管性の認知症患者13人、アルツハイマー病の患者5人に、6ヶ月間脳の循環改善薬とDHA(1日に700mg~1400mg)を経口投与し、患者の病状変化をみるという調査が行われました。
その結果、脳血管性認知症の13人中10人は、生活意欲が高まったり妄想が減少し、アルツハイマー病の5人は意欲・対人関係・落ち着きがやや改善したのです。

また、知的機能の簡易検査結果では、DHAを与えなかった患者は徐々に低下したのに対し、投与した患者は計算力や判断力に改善傾向がみられました。
1人が脂肪の過剰摂取で腹痛を起こした以外に、副作用はなかったそうです。

この調査の検証のため、24人の認知症患者に脳の循環改善薬だけを6ヶ月間飲んでもらうという調査も併せて行ったところ、症状の改善がみられたのはたった2人だけだったのだそうです。

(宮永和夫群馬大医学部講師(神経精神科)、矢沢一良相模中央科学主任研究員)

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